平成18年度 宅建試験 問1から問16
〜私的な挑戦および解説〜

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 【問 1】   TOP
 次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 契約締結交渉中の一方の当事者が契約交渉を打ち切ったとしても、契約締結に至
 っていない契約準備段階である以上、損害賠償責任が発生することはない。

2 民法第1条第2項が規定する信義誠実の原則は、契約解釈の際の基準であり、信
 義誠実の原則に反しても、権利の行使や義務の履行そのものは制約を受けない。

3 時効は、一定時間の経過という客観事実によって発生するので、消滅時効の援用
 が権利の濫用となることはない。

4 所有権に基づく妨害排除請求が権利の濫用となる場合には、妨害排除請求が認め
 られることはない。
私的解説
★信義誠実の原則について★ 
肢1:(誤り)
 契約締結交渉中の段階であっても、当事者は信義誠実に則って行動する義務がある。したがって、契約の準備段階とはいえ、信義誠実に背くような行動により契約交渉をうち切った場合は、不法行為やときとして債務不履行を原因に損害賠償責任が発生する可能性がある。
 
肢2:(誤り)
 信義誠実の原則は、契約の解釈のみならず、権利の行使や義務の履行にも及ぶ。 
肢3:(誤り)
 消滅時効完成後、債権の一部を弁済した場合は、債務者が消滅時効の完成を知っていたか否かにかかわらず、特段の事由がない限りはもはや債務者は債権が消滅時効により消滅していることを主張できない。ここで主張できなくなる理由は消滅時効の援用を放棄したから、ではなく、消滅時効完成後に債権の一部を弁済したことにより債権者が残債務についても弁済してくれる、と期待する利益を害するのは信義誠実に反するから、許されないから、という点に注意が必要である。
 
肢4:(正しい)
 所有権に基づく妨害排除請求が権利の濫用となる以上、当該権利は行使できない。
  
●正解●4●
参考
民法第1条
第一条  私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
     権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
     権利の濫用は、これを許さない。



 【問 2】      TOP
  AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。
しかし、Aは甲土地を売り渡す代理権は有していなかった。この場合に関する次の記述
のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 BがCに対し、Aは甲土地の売却に関する代理人であると表示していた場合、Aに
 甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことをCが過失により知らなかったときは、
 BC間の本件売買契約は有効となる。

2 BがAに対し、甲土地に抵当権を設定する代理権を与えているが、Aの場売契約締結
 行為は権限外の行為となる場合、甲土地を売り渡す具体的な代理権がAにあるとCが
 信ずべき正当な理由があるときは、BC間の本件売買契約は有効となる。

3 Bが本件売買契約を追認しない間は、Cはこの契約を取り消すことができる。ただし、
 Cが契約の時において、Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権がないことを知っていた
 場合は取り消せない。

4 Bが本件売買契約を追認しない場合、Aは、Cの選択に従い、Cに対して契約履行又
 は損害賠償の責任を負う。ただし、Cが契約の時において、Aに甲土地を売り渡す具体
 的な代理権はないことを知っていた場合は責任を負わない。
●私的解説●
★無権代理・表見代理★ 
肢1:(誤り)
 無権代理と表見代理の両方が考えられるが、無権代理であれば、Bが追認しない以上は契約が有効となることはなく、誤り。表見代理についてもCに過失があれば成立する余地はない。
肢2:(正しい)
 いわゆる表見代理のうち権限ゆ越である。Cは善意無過失であり、表見代理が成立する。
肢3:(正しい)
 民法の条文通り。代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
肢4:(正しい)
 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
 しかし、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。 
 ●正解●1●
 ●参考●
(無権代理)
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
(代理権授与の表示による表見代理)
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、代理権を与えた者は、 その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない
代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
@本人の死亡
A代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
委任による代理権は、上記各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。
 


 【問 3】     TOP
  Aは、Bとの間で、A所有の山林の売却について買主のあっせんを依頼し、その
売買契約が締結され履行に至ったとき、売買代金の2%の報酬を支払う旨の停止条件
付きの報酬契約を締結した。この契約において他に特段の合意はない。この場合に関
する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているのはどれか。

1 あっせん期間が長期間に及んだことを理由として、Bが報酬の一部前払を要求して
 きても、Aには報酬を支払う義務はない。

2 Bがあっせんした買主Cとの間でAが当該山林の売買契約を締結しても、売買代金が
 支払われる前にAが第三者Dとの間で当該山林の売買契約を締結して履行してしまえ
 ば、Bの報酬請求権は効力を生ずることはない。

3 停止条件付きの報酬契約締結の時点で、既にAが第三者Eとの間で当該山林の売買
 契約を締結して履行も完了していた場合には、Bの報酬請求権が効力を生ずることは
 ない。

4 当該山林の売買契約が締結されていない時点であっても、Bは停止条件付きの報酬
 請求権を第三者Fに譲渡することができる。
●私的挑戦・見解●
★停止条件★
肢1:(正しい)
 条件が成就するまでは契約の効力が生じない。したがって報酬を支払う義務はない。
肢2:(誤り)
 条件の成就を故意に妨げたことになり、この場合、条件は成就したものとみなされる。
したがって、Bは報酬請求権を取得する。
肢3:(正しい)
 契約の目的が当初から履行不能であり、当該契約自体も無効な契約である。したがってBが報酬請求権を取得することはない。
肢4:
 停止条件付の債権も譲渡可能である。
●参考● 
 (条件が成就した場合の効果) 肢1
停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
  (条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止)
・条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。
 (条件の成否未定の間における権利の処分等) 肢4
・条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。
 (条件の成就の妨害) 肢2
・条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
 (不能条件) 肢3
・不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。

 
  【問 4】             
 A、B及びCが、持分各3分の1として甲土地を共有している場合に関する次の
記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 甲土地全体がDによって不法に占有されている場合、Aは単独でDに対して
 甲土地の明渡しを請求することができる。

2 甲土地全体がEによって不法に占有されている場合、Aは単独でEに対して
 Eの不法占有によってA、B及びCに生じた損害全額の賠償を請求できる。

3 共有物たる甲土地の分割について共有者間に協議が調わず、裁判所に分
 割請求がなされた場合、裁判所は、特段の事情があれば、甲土地全体をAの
 所有とし、AからB及びCに対し持分の価格を賠償させる方法により分割する
 ことができる。

4 Aが死亡し、相続人の不存在が確定した場合、Aの持分は、民法第958条
 の3の特別縁故者に対する財産分与の対象となるが、当該財産分与がなさ
 れない場合はB及びCに帰属する。
 ●私的挑戦・見解●
 肢1:(正しい)
 不法占有者に対し甲土地の明渡しを請求する行為は、保存行為にあたり共有者のうちの1人から単独で請求できる。
 肢2:(誤り)
 明渡し請求は肢1のとおり単独で土地全体の明渡しを請求できるが、損害賠償請求は、持分に応じた部分しか請求できない。
 肢3:(正しい)
 原則は現物分割であるが、特別の事情があれば、裁判所は共有物を共有者の1人のものとし、他の共有者に対して金銭の交付をさせることにより、共有物分割ができる。
 肢4:(正しい)
 相続人なくして共有者のうちの1人が死亡した場合、まずは特別縁故者に財産分与がなされる。特別縁故者も存在しない場合に初めて共有者に属する。
 ●【正解】2●
 
 
 
 
 
 
 


【問 5】
 
Aは、Bから借り入れた2,400万円の担保として第一順位の抵当権が設定され
ている甲土地を所有している。Aは、さらにCから1,600万円の金銭を借り入れ、
その借入金全額の担保として甲土地に第二順位の抵当権を設定した。この場合に
関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 抵当権の実行により甲土地が競売され3,000万円の配当がなされる場合、B
 がCに抵当権の順位を譲渡していたときは、Bに1,400万円、Cに1,600万円
 が配当され、BがCに抵当権の順位を放棄をしていたときは、Bに1,800万円、
 Cに1,200万円が配当される。

2 Aが抵当権によって担保されている2,400万円の借入金全額をBに返済しても、
 第一順位の抵当権を抹消する前であれば、Cの同意の有無にかかわらず、AはB
 から新たに2,400万円を借り入れて、第一順位の抵当権を設定することができる。

3 Bの抵当権設定後、Cの抵当権設定前に甲土地に乙建物が建築され、Cが抵当
 権を実行した場合には、乙建物について法定地上権が成立する。

4 Bの抵当権設定後、Cの抵当権設定前にAとの間で期間を2年とする甲土地の賃
 貸借契約を締結した借主Dは、Bの同意の有無にかかわらず、2年間の範囲で、B
 に対しても賃借権を対抗することができる。

●私的挑戦・見解●
 抵当権の処分、法定地上権の成立要件、短期賃借の保護制度の廃止について。
肢1:
1番抵当権・2,400万円・抵当権者B
2番抵当権・1,600万円・抵当権者C
「抵当権の順位の譲渡」
1番抵当権と2番抵当権の債権額、2,400万円+1,600万円=4,000万円
この範囲内で、まず順位の譲渡を受けた2番抵当権が優先弁済を受け、余った
部分を順位の譲渡した1番抵当権が弁済を受ける。
本肢では、3,000万円で競売されている。まず2番抵当権に1,600万円が配当
され、余った1,400万円が1番抵当権に配当される。
「抵当権の順位の放棄」
1番抵当権を2番抵当権に抵当権の順位の放棄をした場合、1番、2番抵当権の
優先弁済権は同じ優先度になる。すなわちそれぞれの、債権額に応じて案分する。
1番抵当権:2番抵当権=2,400万円:1,600万円=3:2 である。
3,000万円をこの比率で案分すると
1番抵当権:2番抵当権=3:2=1,800万円:1,200万円
正しい。

肢2:抵当権で担保される債権(被担保債権)が消滅すれば抵当権も消滅する。新た
に別の債権を担保するには抵当権を設定しなおさないといけない。誤り。

肢3:法定地上権の成立の要件として、抵当権設定時に土地と建物があり、かつ、土
地と建物が同一人物の所有であることがあげられる。この抵当権設定時とは、本肢で
いうと1番抵当権が設定された時点で判断する。よって本肢は1番抵当権が設定され
た当時、建物が存しないことから、法定地上権は成立しない。誤り。

肢4:短期賃借権保護制度の廃止。先順位抵当権者全員の同意がない限り、借地人
は賃借権を対抗することができない。誤り。

●【正解】●



【問 6】
 
AがBに対して建物の建築工事を代金3,000万円で注文し、Bがこれを完成させた。
この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれ
か。

1 請負契約の目的物たる建物に瑕疵がある場合、瑕疵の修復が可能であれば、Aは
 Bに対して損害賠償を行う前に、瑕疵の修補を請求しなければならない。

2 請負契約の目的物たる建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得な
 い場合には、Aは当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求すること
 ができる。

3 請負契約の目的物たる建物に瑕疵があり、瑕疵の修補に要する費用が契約代金
 を超える場合には、Aは原則として請負契約を解除することができる。

4 請負契約の目的物たる建物瑕疵について、Bが瑕疵担保責任を負わない旨の特約
 をした場合には、Aは当該建物の瑕疵についてBの責任を一切追及することができ
 なくなる。

●私的挑戦・解説●
肢1:仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定め
て、その瑕疵の修補を請求することができる。そして注文者は、瑕疵の修補に代えて、
又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。誤り。

肢2:肢1と同様の理由。損害賠償請求ができる。正しい。

肢3:仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができない
ときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作
物については、この限りでない。本問では建物の請負契約につき契約の解除をするこ
はできない。

肢4:請負人は、担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告
げなかった事実については、その責任を免れることができない。よってBの責任を追
及することができる場合があるので、誤り。

●【正解】●




【問 7】
 
 A銀行のB社に対する貸付債権につき、Cは、B社の委託を受けその全
額につき連帯保証するとともに、物上保証人として自己の所有する土地に担保設定し
ている。DもB社の委託を受け全額につき連帯保証している。保証人各自の負担部分
は平等である。A銀行とB、C及びDとの間にその他特段の約定はない。この場合に
関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば誤っているのはどれか。

1 Cが、A銀行に対して債権全額につき保証債務を履行した場合、その全額につき
 B社に対する求償権を取得する。

2 Cが、A銀行に対して債権全額につき保証債務を履行した場合、その半額につき
 Dに対する求償権を取得する。

3 Cが、担保物の処分代金により、A銀行に対して債権の3分の2につき物上保証
 に基づく弁済をした場合、Cが取得するB社に対する求償権は、A銀行のB社に対
 する貸付債権に劣後する。

4 Dが、Aに対して債権全額につき保証債務を履行した場合、Cの物上保証の担保
 物件の価額相当額につきCに対する求償権を取得する。

●私的挑戦・解説●
この問題は苦手な方なのでちょっと迷った、、、
主たる債務者B/連帯保証人C、D/物上保証人C/
肢1:保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者
に代わって弁済をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。
正しい。

肢2:複数の連帯保証人の一人が弁済をし、共同の免責を得たときは、その連帯保証
人は、他の連帯保証人に対し、各自の負担部分について求償権を有する。
正しい。

肢3:(根拠なし。後日調べてUPします)

肢4:肢2と同様。誤り。

●正解●



【問 8】
  AはBとの間で、土地の売買契約を締結し、Aの所有権移転登記手続きと
Bの代金の支払を同時に履行することとした。決済約定日に、Aは所有権移転手続を
行う債務の履行を提供したが、Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので、A
は履行を拒否した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれ
ば誤っているものはどれか。

1 Bは、履行遅滞に陥り、遅延損害金支払債務を負う。

2 Aは、一旦履行の提供をしているので、これを継続しなくても、相当の期間を定めて
 履行を催告し、その期間内にBが履行しないときは土地の売買契約を解除できる。

3 Aは、一旦履行の提供をしているので、Bに対して代金の支払を求める訴えを提起
 した場合、引換給付判決ではなく、無条件の給付判決がなされる。

4 Bが、改めて代金債務を履行するとして、自分振出しの小切手をAの所に持参して
 も、債務の本旨に従った弁済の提供とはならない。

●私的挑戦・解説●
肢1:相手方が履行の提供をしている以上、Bは履行遅滞に陥る。正しい。

肢2:問題文通り。正しい。

肢3:引換給付判決→Bは、移転登記手続きを受けるのと引換に代金を支払え!
   無条件の場合→ Bは、代金を支払え!
   ということだが、本問の場合は、引換給付判決がなされる。誤り。

肢4:細かいが、自分振り出しの小切手は債務の本旨に従った提供とは言えない。現
   金なら当然債務の本旨に従った、といえるし、小切手でも銀行振出の小切手であ
   れば信用性があり、債務の本旨に従った提供と言える。正しい。

●【正解】●




【問 9】
 民法上の委任契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているもの
はどれか。

1 委任契約は、委任者又は受任者のいずれからでも、いつでもその解除をすることが
 できる。ただし、相手方に不利な時期に委任契約の解除をしたときは、相手方に対し
 て損害賠償責任を負う場合がある。

2 委任者が破産手続開始決定を受けた場合、委任契約は終了する。

3 委任契約が受認者の死亡により終了した場合、受任者は、委任者の相続人から終
 了についての承諾を得るときまで、委任事務を処理する義務を負う。

4 委任契約の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知って
 いたときでなければ、相手方に対抗することができず、そのときまで当事者は委任契
 約上の義務を負う。

●私的挑戦・解説●
肢1:委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。 当事者の一方が相手
  方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を
  賠償しなければならない。正しい。しかし、細かく言うと、やむを得ない事由があった
  ときは、損害を賠償しなくともよい。

肢2:委任は、次に掲げる事由によって終了する。
@委任者又は受任者の死亡
A委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
B受任者が後見開始の審判を受けたこと。
したがって、委任者が破産手続開始決定を受けた場合、委任契約は終了する。正しい。

肢3:肢2の解説参照。死亡すれば委任契約は終了する。誤り。
   過去のわたごと内の解説でも触れたが、委任契約はあくまで当事者の信頼関係
   に基づいているため、一方が死亡すれば終了する。

   なお、「委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその
   相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任
   事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。」とい
   う規定があるが、混同しないように。

肢4:委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知ってい
   たときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。
   正しい。

●【正解】●




【問 10】 
 AがB所有の建物について賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた場合に関する次の
記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 AがBの承諾なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為
 と認めるに足りない特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借
 契約を解除することはできない。

2 AがBの承諾を受けてDに対して当該建物を転貸している場合には、AB間の賃
 貸借契約がAの債務不履行を理由に解除され、BがDに対して目的物の返還を請
 求しても、AD間の転貸借契約は原則として終了しない。

3 AがEに対して賃借権の譲渡を行う場合のBの承諾は、Aに対するものでも、E
 に対するものでも有効である。

4 AがBの承諾なく当該建物をFに転貸し、無断転貸を理由にFがBから明渡請求
 を受けた場合には、Fは明渡請求以後のAに対する賃料の全部又は一部の支払
 を拒むことができる。
【解説】 
肢1:(正しい)
◆賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
◆賃借人がこれに違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
◆しかし、判例は、この無断の転貸が背信的行為と認められる場合に限る、としている。
肢2:(正しい)
◆賃貸借契約が債務不履行により解除された場合は、転貸借も終了する。
◆これに対し、賃貸借契約が合意解除となった場合は、転貸借契約は終了しない。
肢3:(正しい)
◆法律上は、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない、と規定されているが、この承諾は転借人対しても有効であると解釈されている。  
肢4: