私的な宅建試験解説

 平成18年8月28日 UP  取消と無効

 【法律行為】 何らかの法律上の効果が生じることを理解して
         その効果を発生させる意思表示をすること。ま
         たは相手と意思表示が合致すること。

  宅建試験においては、「法律行為」という言葉は「契約」
 と置き換えて考えればよい。(以下「法律行為」を「契約」
 に置き換えて記載する)
 
  【基本的な事例】
  代表的な売買契約を例にしよう。Aさんが甲土地を所有し
 ている。Bさんが甲土地をほしいと考えている。そこでBさ
 んが、Aさんへ「甲土地を1,000万円で売ってほしい」
 という。Aさんは「分かりました。甲土地を1,000万円
 で売ります」と答える。ここでAさんとBさんの意思表示が
 合致するので、売買契約が成立する。

 【無効となる場合】
  ところでこのとき、Aさんは認知症等で契約の意味すら分
 からない、理解できない状況だったらどうだろうか。冒頭で
 書いたように「契約」が成立するには、「その意思表示の結
 果がどうなるか理解していること」が大前提になる。つまり
 この場合、契約は成立していないことになる。すなわり、「
 無効」である。

 【取消となる場合】
  では、BさんがAさんを強迫して無理矢理売買契約を締結
 した場合はどうなるのだろうか。これも無効になるのだろう
 か。いや、ならない。なぜなら、例え強迫されたとはいえ、
 「その意思表示の結果がどうなるか」理解してAさんは意思
 表示している以上、契約は有効に成立する。ただし、完全に
 有効で確定してしまうと、強迫されたAさんが可哀想だ。そ
 こで、契約は一応有効に成立するけど、強迫されたことを理
 由にしてAさんは契約を「取り消すことができる」とした。

 【無効と取消の大きな違い】
 ★無効…契約は最初から成立していない。だから、誰でもい
       つでも無効を主張できる。

 ★取消…契約は成立している。ただ、後から取り消すことが
       できるだけである。

 【無効となる場合】
 @公序良俗に反することを目的にする契約
 (報酬をやるからアイツを殺してくれ、という契約)
 A社会通念上、実現不可能なことを目的にする契約
 (既に消滅している建物の売買契約)
 B意思無能力状態でした契約
 (泥酔状態での契約や【無効となる場合】に記載の契約)

 【取り消すことのできる契約】
 @制限能力者(未成年、成年被後見人、被保佐人、被補助人)
  単独による契約
 ※ただし、未成年者の場合、婚姻すると成年者と同じよう
  に扱われる。婚姻後、未成年のうちに離婚した場合も同
  様に成年者として扱われる
 
 A意思表示に瑕疵(欠陥)がある契約
   例)詐欺、強迫等

 【今回のポイント】
 無効は最初から契約が成立していない。取消は契約は成立
 しているが、あとで取り消すことができる。

       <<<<< 今回はここまで >>>>>
<<<<< 参考過去問として平成17年度問1を掲載>>>>>


■■■■■  平成17年度 本試験 問1  ■■■■■
------------------------------------------------------
 自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方に関する
次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいもの
はどれか。

1.買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの
  間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から
  無効である。
2.買主Cが意思無能力者であった場合、Cは、Aとの間で
  締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にでき
  る。
3.買主である団体Dが法律の規定に基づかずに成立した権
  利能力を有しない任意の団体であった場合、DがAとの
  間で売買契約を締結しても、当該土地の所有権はDに帰
  属しない。
4.買主Eが婚姻している未成年者であり、当該婚姻がEの
  父母の一方の同意を得られないままになされたものであ
  る場合には、Eは未成年者であることを理由に当該売買
  契約を取り消すことができる。
------------------------------------------------------
解答・解説
肢1.制限能力者の単独でした契約は「取り消すことができ
   る」のであって、当初から「無効」となるわけではな
   い。したがって、誤りの記述。

肢2.意思無能力者の契約は「無効」であって、取り消すま
   でもなく「無効」。したがって、誤りの記述。

肢3.宅建試験であまりでないが、このような団体DはD名
   義で契約をすることができない。したがって、正しい
   記述。
※契約行為をすることができるのは「人」である。つまり、
個人の人間である。これが原則だが、株式会社等団体名義で
契約ができないと不都合が生じる。したがって、法律の規定
に基づいて成立した団体(株式会社、社団法人等)の場合は
例外として、団体名義で契約ができることとした。これを、
法が定めた人、という意味で「法人」という。

肢4.未成年者であっても、婚姻をしたら成年と同じように
   扱われるので、契約は完全に有効である。もはや取り
   消すことはできない。したがって、誤りの記述。
※父母の双方の同意を得ることが原則だが、片方の同意のみ
でも有効に婚姻は成立する。
------------------------------------------------------


戻る