私的な宅建過去問解説

平成18年9月29日 UP

工作物等設置責任

★不法行為による損害賠償★
 POINT@
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される
利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責
任を負う。

 原則としては、故意又は過失がある場合でないと、不法行
為とはならず、損害賠償をする責任を負わない。

 土地の工作物等の占有者及び所有者の責任の規定は、
この原則の例外を定めるものである。つまり、所有者につき
故意又は過失がなくとも責任を負う場合を規定している。

土地の工作物等の占有者及び所有者の責任

POINTA
 
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって
他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害
者に対してその損害を賠償する責任を負う。
POINTB
 ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意
をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
POINTC
 
損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、
占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使するこ
とができる。

不法行為による損害賠償請求権の期間の制限★
POINTD
 
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法
定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しな
いときは、時効によって消滅する。
POINTE
 不法行為の時から20年を経過したときも、同様に消滅する。

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平成17年 宅建試験 【問11】
Aは、所有する家屋を囲う塀の設置工事を業者Bに請け
負わせたが、Bの工事によりこの塀は瑕疵がある状態と
なった。Aがその後この塀を含む家屋全部をCに賃貸し、
Cが占有使用しているときに、この瑕疵により塀が崩れ、
脇に駐車中のD所有の車を毀損させた。A、B及びCは、
この瑕疵があることを過失なく知らない。この場合に関す
る次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているも
のはどれか。

1.Aは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれ
  ば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

2.Bは、瑕疵を作り出したことに故意又は過失がなければ、
  Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

3.Cは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれ
  ば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

4.Dが、車の破損による損害賠償責任請求権を、損害及び
  加害者を知ったときから3年間行使しなかったときは、こ
  の請求権は時効により消滅する。

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【解答・解説】
 本事例では所有者はA、占有者はC、工作物設置工事をし
たのはB、損害を受けたのはDとなっている。

 所有者 A   → 賃貸 → 占有者 C
  ↓
 請負者 B

 被損害者 D

肢1.POINTABを参照。工作物の設置又は保存に瑕疵が
   あることによって他人Dに損害を生じたときは、まず第一
   には、その工作物の占有者Cが、被害者に対してその
   損害を賠償する責任を負う。しかし、占有者Cが損害の
   発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者A
   がその損害を賠償しなければならない。つまり、所有者
   Aは相当な注意をしていても、占有者Cが必要な注意を
   している場合は、損害賠償を免れることができない。
   したがって誤りの記述。

肢2.POINT@を参照。不法行為の原則である。請負者Bに
   故意又は過失がなければ損害を賠償する責任は負わな
   い。したがって正しい記述。

肢3.POINTBを参照。工作物の設置又は保存に瑕疵が
   あることによって他人Dに損害を生じたときは、まず第一
   には、その工作物の占有者Cが、被害者に対してその
   損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の
   発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者
   の責任となり、占有者が損害賠償の義務を免れる。
   したがって、正しい記述。   

肢4.POINTC参照。不法行為による損害賠償の請求権は、
   被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知っ
   た時
から三年間行使しないときは、時効によって消滅す
   る。正しい記述。3年、という期間だけではなく、「損害及
   び加害者を知った時」という部分も重要。

【解答 1】
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