私的な宅建試験 解説
平成18年8月30日 UP 錯誤
※前回の冒頭で記載した法律=契約の大前提
【法律行為】何らかの法律上の効果が生じることを理解して
その効果を発生させる意思表示をすること。ま
たは相手と意思表示が合致すること。
【錯誤とは?】
一言で言えば「勘違い」である。Aさんが甲土地と乙土地
を所有していたとする。Aさんは本当は甲土地をBさんに売
るつもりが、勘違いして乙土地を売ります、と言ってしまい
実際に乙土地を売ってしまった場合である。この場合、勘違
いしたAさんにも責任はあるが、法律行為の前提が満たされ
ていない。つまり、Aさんは自分のした意思表示で乙土地を
売るという法律上の効果が発生するとは理解していなかった
からだ。したがって、錯誤による契約は「無効」となる。
【でも、勘違いしたAさんも悪いのでは?】
錯誤による契約は全て無効とすると、Aさんと取引したB
さんがあまりにも可哀想な場合がある。そこで、原則として
無効だけれども、Aさんに重大な過失がある場合は、完全に
有効な契約となることになっている。例えば、AさんがBさ
んに錯誤により「乙土地を売ります」と言ったときに、Bさ
んが「本当に乙土地でいいんですか?甲土地の誤りじゃない
ですか?」と念を押したにもかかわらず、Aさんが「いや乙
土地でいいんです。」と言って契約をしてしまった場合であ
る。この場合はAさんを保護するよりも、取引の安全を確保
した方がいいからである。重大な過失があるAさんをそこま
で保護する必要はない、ということである。
【契約までの課程】
@動機 (近くに駅が出来て地価が上がるから)
↓
A意思 (よし、この土地を買おう)
↓
B表示意思(土地の所有者に申し込もう)
↓
C表示 (その土地を買います、と相手に伝える)
↓
D法律行為(相手が承諾して契約が成立)
このうちのAからBまでを「意思表示」という。民法95
条では『意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは
無効とする。』としており、このAからBの間で錯誤があっ
た場合は無効としている。(例えばドルとポンドは同価値だ
と思って10万ドルのところを、10万ポンドとしてしまっ
た場合など)
したがって、原則として@の動機の錯誤は含まれない。し
かし、通常は「地価があがるから」という動機と「この土地
を買おう」という意思とは切り離せない状態だ。動機の錯誤
による無効を全て認めないというのは、現実的に不都合があ
る。かといって全て無効とすると、動機なんかは心の中で思
うことで、相手は普通知ることができないから、今度は相手
にとって不都合である。
そこで判例では、「相手に動機が表示された場合は、動機
の錯誤であっても無効を主張できる」とした。
【無効の主張の例外】
本来無効な契約は、誰でも主張できる。しかし、この錯誤
による無効は、表意者Aさんの保護のための制度であるから
無効を主張できるのは、原則として表意者Aさんとなる。
※更に例外
CさんはAさんにお金を貸していた。Aさんが錯誤により
自己の所有する不動産をBさんへ売った。これにより、Aさ
んにはめぼしい財産がなくなった。Aさんは錯誤があったこ
とを認めてはいるが、Cさんに対する嫌がらせで無効を主張
しない。
こういった場合は、例外としてCさんはAさんに代位して
Bさんに契約の無効を主張できる。注意すべきことは、Aさ
んが錯誤を認めている場合に限る、ということだ。
【今回のポイント】
・要素の錯誤による意思表示は無効を主張できる。
・動機の錯誤は有効であるが、その動機が相手に表示されて
いれば無効を主張できる。
・表意者に重大な過失がある場合は有効である。
・無効を主張できるのは原則として表意者のみである。
・表意者の債権者は表意者が錯誤を認めていてかつ無効を主
張できない場合に、表意者に代位して無効を主張すること
ができる。
<<<<< 今回はここまで >>>>>
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参考過去問として平成17年度問2を掲載>>>>>
■■■■■ 平成17年度 本試験 問2 ■■■■■
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AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表
示は錯誤によるものであった。この場合、次の記述のうち、
民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
1.錯誤が、売却の意思表示の内容の重要な部分に関するも
のであり、法律行為の要素の錯誤と認められる場合であ
っても、この売却の意思表示が無効となることはない。
2.錯誤が、売却の意思表示をなすについての動機に関する
ものであり、それを当該意思表示の内容としてAがBに
対して表示した場合であっても、この売却の意思表示が
無効となることはない。
3.錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合
意思表示者であるAに重過失があるときは、Aは自らそ
の無効を主張することができない。
4.錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合
意思表示者であるAがその錯誤を認めていないときは、
Bはこの売却の意思表示の無効を主張できる。
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解答・解説
肢1.要素の錯誤による意思表示は無効である。したがって
誤りの記述。
肢2.動機に関する錯誤であっても、その動機が相手に表示
されている場合は、無効を主張できる。したがって、
誤りの記述
肢3.表意者に重大な過失がある場合は、無効を主張できな
い。したがって、正しい記述。
肢4.原則として錯誤による意思表示の無効を主張できるの
は表意者Aのみである。例外にあたらない。したがっ
て、誤りの記述
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