私的な宅建過去問解説
平成18年9月4日 UP 時効
【時効】
民法上の時効には2種類がある。
※取得時効…一定年数以上、自分のものとして占有していた
ら、権利を取得できる。
※消滅時効…一定年数以上、自分の権利を行使していなかっ
た、その権利は消滅する。
【取得時効】
★所有権の取得時効★
(原則)
20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他
人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
あくまで「所有の意思」をもって占有をしなければならな
いので、例えば建物の賃貸借契約をして、賃借人として20
年間占有していても、所有権を取得するわけではないので、
注意。
(善意の占有=自己の所有物であると信じて所有していた場合)
10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他
人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、
かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
★所有権以外の取得時効★
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平
穏に、かつ、公然と行使する者は、前述と同じように、20年
又は善意の場合は10年を経過した後、その権利を取得する。
※善意は、占有の開始時点で善意であれば足りる。
【消滅時効】
消滅時効については時効期間に何種類かあるが、ここでは試
験に出るものについてのみ、説明する。
・債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
・債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは
消滅する。
・所有権は時効により消滅することはない。
その他注意する消滅時効の期間
裁判による場合
確定判決によって確定した権利については、10年より短い
時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10
年とする。
★時効の援用★
取得時効であれば当事者が「時効が成立したので援用します
」と意思表示しなければ権利を取得したことを主張できない。
消滅時効であれば、例えばAさんがBさんにお金を貸してい
て、何の支払いの催促もしないまま10年が経過した場合、B
さんは「時効により消滅した」と主張して初めて権利の消滅を
主張できる。
★時効の援用ができなくなる場合★
時効期間が経過した場合でも次の場合は時効の援用ができな
くなる。
@当事者が時効の援用をしない、と意思表示した場合。
A債権の消滅時効期間経過後、債務者が一部でも弁済した場合
や、債務があると認めた場合などは、時効を援用しない、と意
思表示したものと同様にみなされる。(ただし、時効が完成し
ていることを知らずに弁済した場合等は時効は援用できるが、
一旦認めた以上は、消滅時効の援用を主張することは、信義則上
できないという理由による)
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参考過去問として平成17年度問4を掲載>>>>>
■■■■■ 平成17年度 本試験 問4 ■■■■■
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Aが有する権利の消滅時効に関する次の記述のうち、民法
の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1.Aが有する所有権は、取得のときから20年間行使しな
かった場合、時効により消滅する。
2.AのBに対する債権を被担保債権として、AがB所有の
土地に抵当権を有している場合、被担保債権が時効によ
り消滅するか否かにかかわらず、設定時から10年が経
過すれば、抵当権はBに対しては時効により消滅する。
3.AのCに対する債権が、CのAに対する債権と相殺でき
る状態であったにもかかわらず、Aが相殺することなく
放置していたためにAのCに対する債権が時効により消
滅した場合、Aは相殺することはできない。
4.AのDに対する債権について、Dが消滅時効の完成後に
Aに対して債務を承認した場合には、Dが時効完成の事
実を知らなかったとしても、Dは完成した消滅時効を援
用することはできない。
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解答・解説
肢1.所有権は時効によって消滅しない。したがって、誤り
の記述。
肢2.抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その
担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅し
ない。考え方としては、時効は権利を行使できるとき
から進行するのであり、抵当権の権利を行使できると
きとは、債務者が弁済を怠り、抵当権を実行できると
きから進行するから、ということになる。
ただし、例外として判例では、第三取得者や後順位抵
当権者との関係では,被担保債権が消滅時効にかから
なくても抵当権だけが20年で時効により消滅すると
されている。第三取得者や後順位抵当権者は、抵当権
が実行できるときを登記上知ることができないからと
考えればよいだろう。したがって、誤りの記述。
肢3.今回は相殺については、説明していないが、民法の条
文通りなので、参考として民法508条を掲載する。
「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に
適するようになっていた場合には、その債権者は、
相殺をすることができる。」
したがって、誤りの記述。
肢4.消滅時効の完成後に、時効完成の事実を知らずに債務
を承認した場合は、信義則上、消滅時効の援用をする
ことは認められない。したがって、正しい記述。
【正解】4
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