私的な宅建過去問解説
平成18年9月5日 UP 物上代位
「担保物権」債務者や第三者が所有している財産(不動産
等)に、債権者が債権の弁済を確保するため
に優先的に権利を行使できる物権
事例 AはBに対し、1,000万円を貸し付けた。Aが
この1,000万円を確実に取り立てる方法はある
か?
Bが所有する不動産を担保に入れる。もし、Bがお
金を返さなかったら、Aは担保に入っているB所有
の不動産を強制的に売却(競売)させ、その売却代
金から1,000万円を返済してもらう。
担保物権には基本的に次の4種類がある。今回は詳細説明
はせず各担保物権の簡単な説明にとどめる。
【留置権】
他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を有す
るときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置
することができる権利
【先取特権】
民法その他の法律の規定に従い、その債務者の財産につ
いて、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける
権利
【質権】
債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を
占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自
己の債権の弁済を受ける権利
【(根)抵当権】
債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供
した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の
弁済を受ける権利
【担保物権の性質】
「附従性」「随伴性」「不可分性」「物上代位性」がある。
以下各性質について概略を説明する。
★附従性
担保する債権がなければ担保物権は成立しない、という
性質
※ただし、抵当権に例外あり。根抵当権は適用なし。
★随伴性
担保物権により担保されている債権が他の者に譲渡され
ると、担保物権も移転する、という性質
※元本確定前の根抵当権にはない。適用する余地がない。
★不可分性
被担保債権全部の弁済があるまで、その担保物の全部に
ついて権利を行使できる、という性質
★物上代位性
担保の目的物が売却、賃貸されたり、滅失、損失したた
め、その所有者が売買代金、賃料、損害賠償、保険金等の
請求権を取得する場合には、担保物権はなお、その請求権
の上に存在する、という性質
※留置権にはこの性質はない。
※請求権のうえに存在するので、物上代位するには、そ
の請求権を差し押さえないといけない。差し押さえる
前に所有者に払い渡されてしまえば、担保物権をもは
や行使することができない。
★優先弁済的効力
履行期までに債権の弁済がなされないときは、担保物を
お金に換え(競売等)その代金から優先的弁済を受けるこ
とができる効力
※留置権にはない。ただし、競売されて第三者に担保物が
渡ったとしても、(占有しているかぎり)留置権を行使し
続けることができるので、結果としては優先弁済的効力が
あるのと同様となる。
★留置的効力
目的財産を留置することによって、債務者を心理的に圧
迫し、弁済を促す効力。
※質権と留置権に認められる。
【各担保物権と性質のまとめ】
留置権 | 先取特権 | 質権 | 抵当権 | |
附従性 | ○ | ○ | ○ | ○ |
随伴性 | ○ | ○ | ○ | ○ |
不可分性 | ○ | ○ | ○ | ○ |
物上代位性 | × | ○ | ○ | ○ |
優先弁済的効力 | × | ○ | ○ | ○ |
留置的効力 | ○ | × | ○ | ○ |
<<<<< 今回はここまで >>>>>
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参考過去問として平成17年度問5を掲載>>>>>
■■■■■ 平成17年度 本試験 問5 ■■■■■
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物上代位に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例に
よれば,誤っているものはどれか。なお,物上代位を行う担
保権者は,物上代位の対象とする目的物について,その払渡
し又は引渡しの前に他の債権者よりも先に差し押さえるもの
とする。
1.不動産の売買により生じた債権を有する者は先取特権を
有し、当該不動産が賃借されている場合には、賃料に物
上代位することができる。
2.抵当権者は、抵当権を設定している不動産が賃借されて
いる場合には、賃料に物上代位することができる。
3.抵当権者は、抵当権を設定している建物が火災により焼
失した場合、当該建物に火災保険が付されていれば、火
災保険金に物上代位することができる。
4.不動産に留置権を有する者は、目的物が金銭債権に転じ
た場合には、当該金銭に物上代位することができる。
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解答・解説
担保物権の性質のうち、物上代位性についての問題である。
物上代位を行使するには、先の説明通り、賃料等の請求権を
差し押さえる必要がある。しかし、問題文には他の債権者よ
り先に差し押さえている、との記述がある。したがって、本
問は単純に、担保物権のうち、物上代位性が認められるもの
認められないものはどれか、を問うているだけである。
肢1.先取特権→物上代位性あり。正しい記述。
肢2.抵当権 →物上代位性あり。正しい記述。
肢3.抵当権 →物上代位性あり。正しい記述。
肢4.留置権 →物上代位性なし。誤りの記述。
【正解 4】
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