私的な宅建過去問解説
平成18年9月17日 UP
抵当権と借地権との関係
抵当権と賃借権との対抗関係について。
【原則】
抵当権と賃借権とが設定されている場合、どちらが優先
するかは、一般原則通り、対抗要件をどちらが先に満た
したかによる。
★抵当権の対抗要件は登記である。
★賃借権の対抗要件は登記または物件の引渡しである。
【例外】
しかし、例外を設けないとすると、抵当権の設定された不
動産については、そのリスクから借り手がつかなくなって
しまう恐れがある。だとすると不動産を賃貸し収益をあげる
ことがなくなる。そこで、例外として賃借権の登記をして、
かつその登記よりも前に登記されている抵当権の抵当権者
全員の同意を得て、その旨を登記すれば、抵当権者に対
抗できるものとした。
【法改正】
上記のように法改正されたのは平成18年4月1日である。
それ以前の抵当権と賃借権との関係はなお、改正前の
規定による。改正前の規定は次のとおり。
抵当権設定登記後に設定された賃借権でも、建物の場合
は引渡し又は賃借権の登記を備えた短期賃貸借の場合は
抵当権に対し対抗することができる。
短期賃貸借の期間
・樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
・上記に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
・建物の賃貸借 三年
※この期間を超過したものは、一切対抗できない。
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参考過去問として平成17年度問6を掲載>>>>>
■■■■■ 平成17年度 本試験 問6 ■■■■■
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BはAに対して自己所有の甲建物に平成15年4月1日に
抵当権を設定し、Aは同日付でその旨の登記をした。Aと
甲建物の賃借人との関係に関する次の記述のうち、民法及
び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1.Bは、平成15年2月1日に甲建物をCに期間4年の
約定で賃貸し、同日付で引き渡していた。Cは、この
賃貸借をAに対抗できる。
2.Bは、平成15年12月1日に甲建物をDに期間2年
の約定で賃貸し、同日付で引き渡した。Dは、平成1
6年4月1日以降もこの賃貸借をAに対抗できる。
3.Bは、平成15年12月1日に甲建物をEに期間4年
の約定で賃貸し、同日付で引き渡した。Eは、平成1
6年4月1日以降もこの賃貸借をAに対抗できない。
4.Bは、平成16年12月1日に甲建物をFに期間2年
の約定で賃貸し、同日付で引き渡した。Fは、この賃
貸借をAに対抗できる。
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解答・解説
1.対抗要件を備えた順番は、平成15年2月1日賃借権、同年
4月1日抵当権であり、抵当権よりも先に対抗要件を備えた
賃借権が優先する。したがってCはAに賃貸借を対抗できる。
2.法改正前の事例である。対抗要件を備えた順番は、抵当権
→賃借権であるが、旧法の規定により建物であれば3年以内
の短期賃貸借は抵当権に対抗できる。本肢は2年の賃貸借
であり、抵当権に対抗することができる。
3.肢2と同様な事例だが、本肢では賃貸借期間が4年となって
おり、短期賃貸借の期間を超過している。したがって、EはA
に対し賃貸借を対抗することはできない。
4.法改正後の事例である。法改正後は賃借権の登記をして、
かつその登記よりも前に登記されている抵当権の抵当権者
全員の同意を得て、その旨を登記しなければ、抵当権者に
対抗することはできない。本肢においては、抵当権者の同意
等がないため、FはAに賃貸借を対抗できない。したがって、
本肢は誤りの記述である。
【正解 4】
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