私的な宅建過去問解説

平成18年9月18日 UP
弁済

弁済について重要な部分を箇条書きしていく。

(第三者の弁済)
・債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、
 その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者
 が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
・利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反し
 て弁済をすることができない。

(債権の準占有者に対する弁済)
・債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をし
 た者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限
 り、その効力を有する。

(受領する権限のない者に対する弁済)
・弁済を受領する権限を有しない者に対してした弁済
 は、債権者がこれによって利益を受けた限度におい
 てのみ、その効力を有する。

※ただし上記の(債権の準占有者に対する弁済)の場
 合は除く。

※例えば債権額が100万円。債権者X、債務者Y、
 弁済を受領する権限を有しないものをAとする。

 YがAに100万円弁済した。AはそのうちのXへ
40万円渡した。この場合、実際にXに渡った40万
円についてのみ、弁済の効力を有する。つまり、残り
の60万円についてはYはXに弁済しなければならな
い。 

(受取証書の持参人に対する弁済)
・受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるも
 のとみなす。ただし、弁済をした者がその権限がな
 いことを知っていたとき、又は過失によって知らな
 かったときは、この限りでない。

(代物弁済)
・債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付
 に代えて他の給付をしたときは、その給付は、弁済
 と同一の効力を有する。

(受取証書の交付請求)
・弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証
 書の交付を請求することができる。

(債権証書の返還請求)
・債権に関する証書がある場合において、弁済をした
 者が全部の弁済をしたときは、その証書の返還を請
 求することができる。

(弁済の提供の効果)
・債務者は、弁済の提供の時から、債務の不履行によ
 って生ずべき一切の責任を免れる。

(弁済の提供の方法)
・弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなけれ
 ばならない。ただし、債権者があらかじめその受領
 を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要
 するときは、弁済の準備をしたことを通知してその
 受領の催告をすれば足りる。

(供託)
・債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領するこ
 とができないときは、弁済をすることができる者は、
 債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を
 免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確
 知することができないときも、同様とする。

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平成17年 宅建試験 【問7】
 Aは、土地所有者Bから土地を賃借し、その土地上に
建物を所有してCに賃借している。AのBに対する借賃
の支払債務に関する次の記述のうち、民法の規定及び判
例によれば、正しいものはどれか。
 
1.Cは、借賃の支払債務に関して法律上の利害関係を
  有しないので、Aの意思に反して、債務を弁済する
  ことはできない。

2.Aが、Bの代理人と称して借賃の請求をしてきた無
  権限者に対し債務を弁済した場合、その者に弁済受
  領権限があるかのような外観があり、Aがその権限
  があることについて善意、かつ、無過失であるとき
  は、その弁済は有効である。

3.Aが、当該借賃を額面とするA振出しに係る小切手
  (銀行振出しではないもの) をBに提供した場合、債
  務の本旨に従った適法な弁済の提供となる。

4.Aは、特段の理由がなくても、借賃の支払債務の弁
  済に代えて、Bのために弁済の目的物を供託し、そ
  の債務を免れることができる。
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【解答・解説】
肢1.Aが地代を支払わなければ、BはAとの賃貸借契約
   を解除することができる。つまり建物を取り壊し、
   土地を明け渡さなければならない。そうすると、C
   は退去せざるおえない。このようにCは利害関係人
   となる。利害関係を有する第三者は債務者の意思に
   反して弁済することができる。誤り。

肢2.債権の準占有者への弁済の問題である。債権の準占
   有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意
   であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効
   力を有する。つまり本肢では有効な弁済となる。

肢3.宅建試験では珍しい問題。弁済は債務の本旨に従っ
   て行わなければならない。この点、銀行振出の小切
   手は信用性があるが、それ以外(個人)の振出小切
   手は信用性が低い(不渡りの可能性)。したがって
   債務の本旨に従った弁済とは言えない。誤り。

肢4.債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領するこ
   ができないときは、弁済をすることができる者は、
   債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を
   免れることができる。つまり、債権者が受領を拒ん
   だ等の事由がある場合に供託し、債務を免れること
   ができる。本肢は「特段の理由がなくても」として
   いる以上、債務を免れることはできない。誤り。

【解答 2】
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