平成18年9月29日 UP

 今回は徹底的に遺言についてのみ、解説・確認しようと思う。

第1章 総則

【遺言の方式】
遺言は、民法に定める方式に従わなければ、することができない。

【遺言能力】
15歳に達した者は、遺言をすることができる。

制限能力者の規定(未成年、成年被後見人、被保佐人、被補助人)
 は、遺言については、適用しない。

 つまり、制限能力者であっても、遺言をすることは可能である。

遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

包括遺贈及び特定遺贈
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処
 分することができる。ただし、遺留分に関する規定に違反することが
 できない。

 包括遺贈 → 全財産をAに遺贈する。全財産をA2分の1、B2分の
          1の割合で遺贈する。

 特定遺贈 → 甲土地についてはAに遺贈する。乙土地についてはB
          へ遺贈する。

 つまり、遺贈の目的物が特定されているのが特定遺贈。
 単に全部や割合的に遺贈する場合は、包括遺贈。

【相続人に関する規定の準用】
胎児は、遺贈については、既に生まれたものとみなす。
・ただし、胎児が死体で生まれたときは適用しなし。
・ 受遺者の欠格事由
@故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死
 亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
A被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかっ
 た者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶
 者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
B詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り
 消し、又は変更することを妨げた者
C詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、
 取り消させ、又は変更させた者
D相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

被後見人の遺言の制限
被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは
 直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
上記の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合に
 は、適用しない。

第2章 遺言の方式

§1 普通の方式

(普通の方式による遺言の種類)
 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。
ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。

(自筆証書遺言)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を
 自書し、これに印を押さなければならない。
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これ
 を変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を
 押さなければ、その効力を生じない。

(公正証書遺言)
・公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 証人二人以上の立会いがあること。
 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、
   又は閲覧させること。
 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、
   印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人が
   その事由を付記して、署名に代えることができる。
 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨
   を付記して、これに署名し、印を押すこと。

(秘密証書遺言)
・秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと
 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺
   言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、
   遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

(方式に欠ける秘密証書遺言の効力)
秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、自筆証書
 遺言に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力
 を有する。

(成年被後見人の遺言)
・成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするに
 は、医師二人以上の立会いがなければならない。
遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害によ
 り事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署
 名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、そ
 の封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

(証人及び立会人の欠格事由)
 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
 未成年者
 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

(共同遺言の禁止)
・遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

§2 遺言の効力

(遺言の効力の発生時期)
・遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡
 後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生
 ずる。

(遺贈の放棄)
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

(受遺者に対する遺贈の承認又は放棄の催告)
遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負う者をいう。)その他の利害関
 係人は、受遺者に対し、 相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承
 認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる。この場合において、
 受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないとき
 は、遺贈を承認したものとみなす。

(受遺者の相続人による遺贈の承認又は放棄)
受遺者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続人
 は、自己の相続権の範囲内で、遺贈の承認又は放棄をすることができ
 る。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意
 思に従う。

(遺贈の承認及び放棄の撤回及び取消し)
遺贈の承認及び放棄は、撤回することができない。
詐欺又は強迫等の場合の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
・上記の取消権は、追認をすることができる時から6か月間行使しないとき
 は、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から10年を経過
 したときも、同様とする。

(包括受遺者の権利義務)
・包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

(受遺者による担保の請求)
・受遺者は、遺贈が弁済期に至らない間は、遺贈義務者に対して相当の担
 保を請求することができる。停止条件付きの遺贈についてその条件の成
 否が未定である間も、同様とする。

(受遺者による果実の取得)
・受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を取得する。
 ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に
 従う。

(遺贈義務者による費用の償還請求)
・留置権の規定は、遺贈義務者が遺言者の死亡後に遺贈の目的物につい
 て費用を支出した場合について準用する。
果実を収取するために支出した通常の必要費は、果実の価格を超えない
 限度で、その償還を請求することができる。

(受遺者の死亡による遺贈の失効)
遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じ
 ない。
停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡し
 たときも、前項と同様とする。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を
 表示したときは、その意思に従う。

(遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属)
遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失った
 ときは、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属する。
  ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思
 に従う。

(相続財産に属しない権利の遺贈)
遺贈は、その目的である権利が遺言者の死亡の時において相続財産に
 属しなかったときは、その効力を生じない。ただし、その権利が相続財産
 に属するかどうかにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認められ
 るときは、この限りでない。

・相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が上記の規定により有効で
 あるときは、遺贈義務者は、その権利を取得して受遺者に移転する義
 務を負う。
上記の場合において、権利を取得することができないとき、又はこれを
 取得するについて過分の費用を要するときは、遺贈義務者は、その価
 額を弁償しなければならない
。ただし、遺言者がその遺言に別段の意
 思を表示したときは、その意思に従う。

(不特定物の遺贈義務者の担保責任)
不特定物を遺贈の目的とした場合において、受遺者がこれにつき第三
 者から追奪を受けたときは、遺贈義務者は、これに対して、売主と同じ
 く、担保の責任を負う。
不特定物を遺贈の目的とした場合において、物に瑕疵があったときは、
 遺贈義務者は、瑕疵のない物をもってこれに代えなければならない。

(遺贈の物上代位)
遺言者が、遺贈の目的物の滅失若しくは変造又はその占有の喪失に
 よって第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、その権利
 を遺贈の目的としたものと推定する。
遺贈の目的物が、他の物と付合し、又は混和した場合において、遺言
 者が民法の規定により合成物又は混和物の単独所有者又は共有者
 となったときは、その全部の所有権又は持分を遺贈の目的としたもの
 と推定する。

(第三者の権利の目的である財産の遺贈)
遺贈の目的である物又は権利が遺言者の死亡の時において第三者の
 権利の目的であるときは、受遺者は、遺贈義務者に対しその権利を消
 滅させるべき旨を請求することができない。
ただし、遺言者がその遺言
 に反対の意思を表示したときは、この限りでない。

(債権の遺贈の物上代位)
・債権を遺贈の目的とした場合において、遺言者が弁済を受け、かつ、
 その受け取った物がなお相続財産中に在るときは、その物を遺贈の
 目的としたものと推定する。
金銭を目的とする債権を遺贈の目的とした場合においては、相続財産
 中にその債権額に相当する金銭がないときであっても、その金額を遺
 贈の目的としたものと推定する。

(負担付遺贈)
負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度におい
 てのみ、負担した義務を履行する責任を負う。
受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、
 自ら受遺者となることができる
。ただし、遺言者がその遺言に別段
 の意思を表示したときは、その意思に従う。

(負担付遺贈の受遺者の免責)
負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴
 えによって減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じて、そ
 の負担した義務を免れる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思
 を表示したときは、その意思に従う。

§4 遺言の執行

(遺言書の検認)
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁
 判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管
 者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
上記の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の
 立会いがなければ、開封することができない。

(過料)
・上記の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで
 遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万
 円以下の過料に処する。

(遺言執行者の指定)
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその
 指定を第三者に委託することができる。
遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、
 これを相続人に通知しなければならない。
遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、
 遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。

(遺言執行者の任務の開始)
・遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければ
 ならない。

(遺言執行者に対する就職の催告)
相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定
 めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告を
 することができる。この場合において、遺言執行者が、 その期間内に相
 続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす

(遺言執行者の欠格事由)
・未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。

(遺言執行者の選任)
遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関
 係人の請求によって、これを選任することができる。

(遺言執行者の権利義務)
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行
 為をする権利義務を有する。

(遺言の執行の妨害行為の禁止)
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言
 の執行を妨げるべき行為をすることができない。

(遺言執行者の地位)
遺言執行者は、相続人の代理人とみなす

(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)
・遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決す
 る。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その
 意思に従う。
各遺言執行者は、上記の規定にかかわらず、保存行為をすることが
 できる。

(遺言執行者の解任及び辞任)
遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、
 利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる
遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、
 その任務を辞することができる。

§5 遺言の撤回及び取消し

(遺言の撤回)
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一
 部を撤回することができる。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
・前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分について
 は、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
・遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合につい
 ても同様とする。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分につい
 ては、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物
 を破棄したときも、同様とする。

(撤回された遺言の効力)
撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は
 効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。
 ただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。

(遺言の撤回権の放棄の禁止)
遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。

(負担付遺贈に係る遺言の取消し)
負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相
 続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。
 この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺
 贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

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