私的な宅建過去問解説

平成18年9月23日 UP
売買契約の解除及び売主の担保責任

★売主の担保責任による解除★

他人の権利の売買における売主の義務
他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権
 利を取得して買主に移転する義務を負う。

他人の権利の売買における売主の担保責任
売主がその売却した権利を取得して買主に移転すること
 ができないときは、買主は、契約の解除をすることができ
 る。この場合において、契約の時においてその権利が売主
 に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をする
 ことができない。

※他人物売買で、売主が権利を取得して買主へ移転する
 ことが出来なかった場合
買主が善意 → 契約の解除 + 損害賠償請求権
買主が悪意 → 契約の解除 のみ

他人の権利の売買における善意の売主の解除権
売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属しな
 いことを知らなかった場合において、その権利を取得して買主
 に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、
 契約の解除をすることができる。
買主が契約の時においてその買い受けた権利が売主に属し
 ないことを知っていたときは、売主は、買主に対し、単にその
 売却した権利を移転することができない旨を通知して、契約
 の解除をすることができる。

※契約時に売主が自己の所有に属しないことを知らなかった場合
買主が善意 → 売主は、損害を賠償して契約を解除できる
買主が悪意 → 売主は損害賠償することなく契約を解除できる


権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任
売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主
 がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不
 足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。
残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったとき
 は、善意の買主は、契約の解除をすることができる。
代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の
 請求をすることを妨げない。

※一部他人物売買の契約の解除と損害賠償
買主が善意 → 契約の解除 又は 代金減額 + 損害賠償
買主が悪意 → 契約の解除 又は 代金減額 のみ

買主が善意であったときは事実を知った時から、悪意であったと
 きは契約の時から、それぞれ一年以内に行使しなければならない。

数量の不足又は物の一部滅失の場合における売主の担保責任
上記他人物売買及び一部他人物売買の規定は、数量を指示して
 売買をした物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に既に
 滅失していた場合において、買主がその不足又は滅失を知らな
 かったときについて準用する。

【地上権等がある場合等における売主の担保責任】
売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の
 目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために
 契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解
 除をすることができる。この場合において、契約の解除をすること
 ができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しな
 かった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場
 合について準用する。
契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から
 一年以内にしなければならない。

抵当権等がある場合における売主の担保責任
売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の
 行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解
 除をすることができる。
買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対
 し、その費用の償還を請求することができる。
買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。

★手付解除★
買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履
 行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額
 を償還して、契約の解除をすることができる。

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平成17年 宅建試験 【問9】
 売買契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定
及び判例によれば、正しいものはどれか。

1.買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知りつつ
  売買契約を締結し、売主が売却した当該目的物の所有権
  を取得して買主に移転することができない場合には、買主
  は売買契約の解除はできるが、損害賠償請求はできない。

2.売主が、買主の代金不払を理由として売買契約を解除した
  場合には、売買契約はさかのぼって消滅するので、売主は
  買主に対して損害賠償請求はできない。

3.買主が、抵当権が存在していることを知りつつ不動産の売
  買契約を締結し、当該抵当権の行使によって買主が所有
  権を失った場合には、買主は、売買契約の解除はできるが
  売主に対して損害賠償請求はできない。

4.買主が、売主に対して手付金を支払っていた場合には、売
  主は、自らが売買契約の履行に着手するまでは、買主が履
  行に着手していても、手付金の倍額を買主に支払うことによ
  って、売買契約を解除することができる。
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【解答・解説】
肢1.※他人物売買で、売主が権利を取得して買主へ移転する
     ことが出来なかった場合
    買主が善意 → 契約の解除 + 損害賠償請求権
    買主が悪意 → 契約の解除 のみ

    正しい記述。

肢2.実際には諸説学説はあるが、法が契約の解除があった
   場合でも損害賠償を請求できる旨を規定しているため、
   例え解除により遡及的に契約が消滅したとしても、損害
   賠償の請求はできる。

肢3.売買の目的である不動産について存した抵当権の行使
   により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約
   の解除をすることができる。そして買主は、損害を受けた
   ときは、その賠償を請求することができる。

肢4.買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が
   契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄
   し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすること
   ができる。条文上は明確にされていないが、「当事者の
   一方」とは「契約の相手方」と理解されている。
   本肢では、相手方が履行に着手しているため、手付に
   よる契約の解除はできない。

【解答1】
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